005【国語】言葉の威力の高め方(前編)

005【国語】言葉の威力の高め方(前編)

“軽い言葉”と“重い言葉”の差はどこで生まれるか

2022/7/14

こんにちは、今日の特別講義は「国語」です。 テーマは「言葉の威力の高め方」について。
では、授業を始めます。

■全男子の憧れでありバイブル

男の子はみんな大好きな『グラップラー刃牙』というマンガがあります。板垣恵介による格闘マンガで、20年以上シリーズが続いている名作です。ぼくも男の子ですから、もちろん全巻持っています。
豆情報:第11回マンガ大賞、第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、第22回手塚治虫文化賞新人賞を受賞した、『BEASTERS』の作者でありマンガ界のホープ、板垣巴留は『刃牙』の作者、板垣恵介の娘です。親子同時連載は偉業です。
さて、『刃牙』には数え切れないほどの魅力的なキャラクターたちが登場しますが、なかでも一二を争う人気キャラに花山薫(はなやま かおる)がいます。「大人が憧れる未成年」という、最高のキャッチコピーを持つ極道です。
花山薫のファイトスタイルは喧嘩です。素手で殴る蹴る。それで他の格闘技を極めたライバルたちにそれで太刀打ちできるのか……というと、できます。なにせ彼のパンチは作品内でもおそらく一番の威力を保持しているからです。

■拳で殴るのも言葉で殴るのも原理は同じ

『刃牙』ラバーにとって、花山薫といればこれ、と言うほど有名な公式があります。それが「握力×体重×スピード=破壊力」です。
この公式が現実に正しいかどうかはさておき、説得力はあります。拳がやわらかく、体重が乗っておらず、遅いパンチと、石のように固く握られた拳で、体重が乗り、全速力で繰り出されたパンチと、どちらの威力が高いかと問われれば、答えるまでもありません。
  • 握力×体重×スピード=破壊力
この公式は、実は言葉を少し入れ替えると、そのまま「言葉の破壊力」の公式として使うことができます。もったいぶらずに言いましょう。
  • 確信×体験×テクニック=(言葉の)破壊力
これが「言葉の破壊力」を左右する要素です。

■第一に、体重が乗っているかどうか

体重が乗っていないパンチは軽い。これは女性でも理解できると思います。逆に体重の軽いボクサーが、非常に重く強烈なパンチを打つことができるのは、うまく体重を乗せられるテクニックがあるからです。
言葉も同じです。すべての言葉の重さは均等ではありません。軽い言葉もあれば、重い言葉もあります。話者によって変化もすれば、同じ話者でも話題や内容によっても変化します。
では、言葉における「体重」とは何かというと、それは「体験」、より丁寧に言えば「身体性」です。
体験(身体性)が乗っていると、言葉は重くなります。体験(身体性)がない(感じられない)と、言葉は軽くなります。シンプルですが、とても重要な概念ですので、まずはこれをしっかり憶えておいてください。

■身体性とは“手とつなげる”こと

平成思想界の巨人と呼ばれた吉本隆明は、これを端的に「手とつなげる」と表現していました。「手」は肉体そのものを意味しつつ、同時に「食べる」ことのメタファーでもあります。
自分が手を使ってやってきたこと、やっていることから、考える。それが思索の基本だと。ぼくもそのとおりだと思っています。
余談になりますが、これはそのまま「人の話をどう聞くか」の方針にもなります。例えば、タクシーに乗って、運転手が政治や景気について話していたとします。このとき、運転手の話に真剣に耳を傾けるか、それとも聞き流すのか。
ぼくはその話が彼(彼女)の「手とつながっているか」で判断しています。つまり、ただこう思う、こうじゃない、という話に大した価値はありません。けれどそれが「タクシー運転手という立場では、実感としてこう思う」や「タクシードライバーという仕事に置き換えると、こういうことが言える」といったものであれば、それは非常に貴重な話です。

■身体性(経験)は拡張できる

とはいえ、ぼくはなにも「経験至上主義者」ではありません。実体験の強度は確かに高いですが、それだけでは話せる内容がかなり限定されてしまいます。具体的には、疑似体験も体験ですし、経験的事実も使えます。
他にも、どうすれば言葉の身体性を高められるか、言い換えれば言葉に体重が乗せられるかについては、次回より詳しくしていきましょう。
残りの二要素、「確信」と「テクニック」についても、おいおいお伝えしていきます。
では、今日の授業「言葉の威力の高め方(前編)」はここまでです。
また次回。

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